バンドとショウタイム

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Count Basie.

 

 

 

 

 

 お店(キャバレー)に入っているバンドは普通二つのバンド(店によっては三つとか)が互いに交代しながら演奏を続けるわけですが、その中で大体二回のショウタイムというのがあって、そのショウのバック演奏を務めるバンドが一応メインバンドになり、もう一つがサブバンドになるのが、キャバレーが姿を消すまでの標準だったと思います。

 

 

 演奏時間は例えばサブのバンドが夕方の6時半から7時までで、その後メインが7時から7時40分までの40分間演奏するということであれば、以後8時台、9時台、10時台、11時台も同じような時間帯となって、その内の8時台と10時台にショウタイムが入る、というような構成になっていたのが多かったように思います。

 

 

 

 サブのバンドはまあ、つなぎの役目なので人数も少なく、トリオとかトリオ+管のカルテットのバンドがほとんどで、よほどの大きな箱の場合は別なのでしょうが、私はそういうビッグなバンドを知らないので、そういう大きな箱の実際はどうだったのかは残念ながら言うことができません。

 

 ショウが入る前の休憩時間に打ち合わせがあります。

数人のチームもあれば男女のペアもあり、毎日変わることもあれば1週間同じなこともあり、で実に様々なショウがあったのですが、とにかく初日は初めて見る譜面を間違いなく演奏しなければならないわけで、これを初見というのですが、やはりここは経験豊富なトップのトランペットやサックス奏者が頼りになるわけで、たとえ誰かが間違えたとしても、このトップの人が全体を引っ張っていくだけの力はあるのが普通なので、あとの全員はトップの演奏に付いていくという暗黙の前提のもと、演奏は進んでいくことになる訳です。

 

 とにかく立ち止まることは絶対に許されないのですから、ショウによってはお店の営業前に全員集合してショウの人と一緒にリハーサルということもあります。

 

 ショウの時間は10分から20分くらいだったでしょうか。正確に測ったことはないので断定はできないのですが、譜面を見るとかなりカットされているようなところもあって、最初の振り付けのままでどこのお店でも通用するということは、あまり無いような気がします。

 

 

 この初めて見る譜面を演奏する能力(初見)は、やっぱり個人差があって、特にドラムの人が途中間違えると酷いことになることが多いんですね。

 

 ドラムはリズムを刻む中心ですから、それが崩れると柱が一本倒れるようなもので、ショウを演じている人も決めるところも決めることができないまま、ざざーとエンディングに向かって進行していくようなことになっているのでしょうし、後ろで演奏しているバンドにとっても無理やり格好をつけなければ納まらず、という酷い状態のままショウーが終わってしまう、なんてことにもなってしまうわけなんですね。

 

 しかし、とにかく立ち止まることは許されないので、バンマスかトップの人が全体をまとめ、収拾して一応終わらせるのですが、後味の悪いことはぬぐえません。

 

 

 終わってしまったものはどうやったって取り返すことはできないのですが、人間そう簡単に割り切ることはできないのです。自分がミスって皆に迷惑をかけてしまったときの、あの痛切な痛みと悔しさと情けなさの感覚は心の底に刻まれて、いまだにそのときの夢を見るほどなんですね。

 

 

 最初のショータイムががたがたになったとしても2回目はすぐきます。

また初見の譜面との格闘が始まるのですが、普通二回続けてミスることはあり得ません。

 

 次は 当たり前に演奏して当たり前に「お疲れさま」と言って今日のショウタイムは終るわけです。