アー、ベー、ツェー、デー、・・・

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石井彰(p)

 

 

 

 

 

 

 譜面(楽譜)を読む、その読み方はバンドに入ってみると、皆さん代々受け継いできたのか、ドイツ語と英語のチャンポン(まぜこぜ)でしたね。

 

 音合わせする基本の音はAなのですが、このAを「アー」とドイツ語読みするのが普通で、「エー」と発音する人はいなかった記憶があります。

 あとCを「シー」ではなく「ツェー」とこれも又ドイツ語読みすることが多かったような気がしてますが、この辺は曖昧です。

 

 

 普通ト音記号(🎼)で書かれた楽譜(おたまじゃくし)を目で読んで、それぞれがその楽譜を実際の音に変換するわけですが、そのときそこに書かれているオタマジャクシをどう読んでいるかは、本人以外にはわからないことであって、実際は見た瞬間にほぼ自動的に音として変換されていなければ、合奏、アンサンブルとして成り立たないことになるので、どう読むかというのはあくまで練習の段階のことになるのでしょうが、これ、実は案外とやっかいなんですよね。

 

 絶対音感を持っている人は別にして、そういう特殊な音感を持っていない者にとっては普通ピアノを無差別にポンと鳴らされても、その音が何の音なのかは分からない訳で、ましてやコード(和音)などは論外になるわけです。

 

 今や日本で聞く音楽はほとんどがヨーロッパで発達したスケール(音階)とコード(和音)とリズムの三要素からなっている音楽ばかり、といってもいいのでしょうが、そのスケール(音階)は基本ドレミファソラシの構成音で成り立っているのですが、

このドが絶対音としてのABCD・・のどの音から出発するのか、という違いによって例えばCをドとして次々に音階の音を積み上げていくとき、その音階をCメジャー(ハ長調)と呼ぶし、Fの音から出発してドレミ・・と音を積み上げていくとFメジャー(ヘ長調)と呼ぶわけです。

 

 ですからFメジャーの曲をそれぞれの楽器の音に変換するとき、CメジャーならばFの音がファなのですが、Fメジャーならばドになるわけで、私のようにほとんど基礎的な音楽理論も知らずに、いきなりバンドの世界に飛び込んでいった人間にとっては、最初(いやそれからもずっと)おおいに戸惑ってしまったのです。

 

 五線譜にフラット(♭)もシャープ(♯)も何の記号もついてないCメジャーならば絶対音としてのCDEF・・・とドレミファ・・・が一致して、オタマジャクシをそのままドレミと読んでいけるのですが。キー(調)が変わると、今言ったように絶対音の音列としてのCDE・・と相対音列としてのドレミ・・が一致しなくなるので、どう読んでよいのか混乱してしまうわけです。

 

 本当は全ての音階に対して相対的音感を養うために、それぞれのキーごとにドレミ・・と読んで変換していければ良いのでしょうが、音が上下に激しく飛んでしまうととてもそれぞれを意識して読むことはできず、結局、キーに関係なくその五線紙の上に置かれているオタマジャクシを絶対音的にピアノの鍵盤を押すような感覚で、直感的に読んでいったような気がしています。

 

 

 

 なにせ音もろくに出ないくせにトランペッターの立ちんぼうとしていきなりバンドに入ったのですから、最初は「音を出さなくていい(邪魔になるから)」と言われたのを覚えています。

 

 それから少しずつハーモニーとして先輩について行くことになるのですが、ステージの本番中に教えてもらうことは不可能なので、ミスをするとトップのトランペッターから足で蹴られたことは何回もあります。

 ミスを指摘するには、その時はそれしか方法がないからです。

 

 今思うと、まことによく辛抱してくれたというか、ほんとにトップの人はやりづらかっただろうなあ、というか辞めて欲しいと思っていただろうなあと思うんです。

 でも、バンマスから面倒見てくれと言われたら、なにせ絶対的な親分なわけですから、いやとは言えないでしょうし、きっといくらかのギャラアップもあったことでしょうが、そのアップに見合うストレスだったかどうかは疑問ですよね。