♯(シャープ)と♭(フラット)

f:id:sekaunto:20190426110744j:plain

Don Cherry.

 

 

 

 

 

 ♯ はその音を半音上げる記号で、♭ は逆にその音を半音下げる記号ですが、この記号がたくさん付いているキー(調)になればなるほど、ピアノが弾きずらくなってくるのは、やはり馴れてないからなので、レッスンを受けていたとき、先生にそのことを尋ねてみると、「全然変わらない。どんなキーでも同じ。」というような言葉が返ってきたことを覚えているので、これはやはり子供の頃から譜面を見続けて練習していれば、記号の多い少ないは何の障害にもならないようなんです。

 

 

 前にも書いたのですが、トランペットでピアノの譜面を見て、例えばCの音を吹くと実際に出る音(絶対音)はB♭(ビーフラット)になるんですね。

 

 ですのでピアノと同じCを出したいときはトランペットではDの音を吹かなければなりません。

 

 そういう構造になっているからだと思うのですが、ラッパの譜面は私が覚えている限りではフラット系のキーがシャープ系で書かれた譜面より多かったと思います。

 

 そういうトランペット時代の馴れと、そしてこれは記号の形♭は曲線が目立ち、♯は直線だけという見た目の印象とフラットとシャープの言葉の意味からくる印象が重なって、私自身はどうも♯(シャープ)が苦手になってきてしまったんです。

 

 シャープはなにか尖ったざらざらした感じがあり、フラットはそれに比べて柔らかなふわっとした感じがするのですが、その印象はあくまでも譜面から来る感覚であって、譜面を離れて音楽を聞くときにはそういう感覚が起こることはないです。

 

 

 

 演奏する時どちらの記号もせいぜい4個(今はメジャーキーに限って話してます)、フラットならばA♭メジャー、シャープならばEメジャーくらいまでなら、なんとか大きなミスなく弾けるというか、気持ちにもいくらか余裕があるのですが、これが5個になると(このキーの譜面はあまり無かったのですが)もう混乱して、ミスタッチの連続も不思議ではなくなり、第一に心に余裕がないので冷静でいられなくなってしまうわけです。

 

 

 

 

 フラット5個のD♭の譜面では忘れられない、というよりも今でも思い出しては心が騒ぐ苦い思い出があります。

 

 その当時から見て、昔売れていた男性タレントが来ることになって夕方からリハーサルをやることになり、歌伴としてこのD♭の曲が出てきて冒頭ピアノがアルペジオで音を出すことになっていたのですが、ほとんど黒健ばかりのアルペジオなので、一音、一音きれいに弾けなかったのですね。

 

 歌い手はそのコードを聞いて歌い出すのですから、音が取れなかったら歌えないことになります。

 D♭を半音下げれば記号の何もないCメジャーとなって抵抗は何もないのですが、そんなことは言ってられません。

 

 二回音出しをしてもやはりきれいに音が分散していかないので、そのタレントも困ってしまい、その時バンマスが「実は正規のピアノがどうしても間に合わなくて、今はトラ(エキストラ)を頼んできてもらっている」というような言い訳を考えてくれ、「じゃあ、本番のときには正規のピアノでお願いします」とタレントも了承し、その場をそれで終わりにして次の曲へと進行していったのでした。

 

 もちろん本番も私が弾いたのですが、そのショウタイムの顔合わせのときに「あなたですか」ともろに言われてしまい、しかし仕様がありません、私しかピアノはいないのですから、そのまま本番を迎え、まっ何とか乗り切ったわけです。

 

 

 このときの印象があまりにも強烈だったからでしょう、バンドを止めてからも夢には何回もてくるし、ふと思い出すと息苦しくなるほどの後遺症が残ってしまいました。

 

 

 

 私自身が一番好きだったキーはフラットひとつのFメジャーで、このキーのほうが何の記号もないCメジャーよりは弾きやすく、なにか柔らかい感じもしてとても気に入っていたものでした。