いくら考えても納得がいかない・・

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Miles Davis.

 

 

 

 

 

  約15年間のバンド生活で一度だけ、未だにどうしてだったのか、その原因はわからないまま謎なのですが、そのバンドにいた期間(たぶん3か月くらい)徹底的にいびられた或いはいじめられた或いは無視されたことがあります。

 

 その人とは初めての出会いだったのにも関わらず、まるで代々の親の仇でもあったかのような、もっと言えば過去世からの悪因縁がここで露呈したかのような、そんな具合に私とは口をきいてくれなかった苦い思い出があるのです。

 

 なんだったのでしょうね。

 

 思い出すたびに、けれどその原因にまるで心当たりがないのです。

 

 その時私は札幌でピアノを弾いていました。

 

 トランペットから転向して、そのトランペット時代のバンド経験が生きて、キャバレーで演奏するピアノの譜面にも適応でき、もちろんピアノの技術そのものを言い出したら話にもならないような腕前であっても、ダンス音楽の伴奏という面だけに絞れば、それなりに弾けるようにはなっていたのでした。

 

 何件かのお店も経験して、どこかの箱のバンドとしてギターのバンマスに誘われて加入したのだと思います。

 

 編成はギター、ピアノ、ビブラホーン(ウ”ァイブ)、ベース(或いはベース無し)、ドラムスの5、(4)人だったと思いますが、その私を徹底的に無視しつづけた人がビブラホーン奏者で、その当時の薄野(ススキノ)でも、ウ”ァイブの奏者はごく少なかった筈で、無論私にとっては初めての経験でした。

 

 新しいお店の楽屋で初めて顔合わせした筈なのですが、どうもその辺のところは具体的に思い出せません。

 

 挨拶はどこでもいつでも「おはようございます」で始まるのですが、どうもその日のその顔合わせから、私はその先輩のウ”ァイブ奏者のお気に召さなかったらしく、その日から私と口をきこうとしてくれなかったようなんです。

 

 まあ、どこか生意気なところがあるのは別に私に限ったことではなく、誰もが必ず生意気な面を持っているわけですから、一目見るなり、こいつ生意気な奴だなと思ったとしても、それを露骨に態度にだすことは大抵の場合ないわけで、その感情をちらちら出すにしても朝から晩まで、何の遠慮もなく出し続けると言うこと自体がホントは生意気そのものなんですが、しかし、何と言ってもバンドの世界も長幼の別、先輩、後輩の分別、建前は存在するので、こちらとしては、なぜ自分がこんなに無視されいびられるのかが納得できないまま、そのバンドを辞めるまで我慢せざるを得ないのでした。

 

 

 それにしても未だにわからないままなんです。

 

 会ったとたんに生意気な口をきくことなど、私のような気の弱い人間ができるようなことではなく、ススキノの先輩としての名前はギターのバンマスから聞いていた筈なのですから、ますますそのような失言などは無かった筈なのです。

 

 

 そのウ”ァイブの先輩の言葉として今も鮮明に覚えているのは「アドリブはにんじんよりも大嫌いだ」という、非常に印象に残る一言で、私もニンジンその他野菜は嫌いなのですが、その嫌いなニンジンよりもアドリブが大嫌いと放言して止まない、その言動が私にはちょっと理解できなかった覚えがあります。

 

 私だって、その頃まだ系統だったジャズ理論も習ってはいなくて、コード進行理論も手探り状態だったし、レコードで聞いているようなアドリブとは比べることもできない未熟なものだったにしても、やはりジャズに対する憧れは結局はアドリブへと行き着くのですから、そのアドリブを「ニンジンよりも大嫌いだ」と言い放つその先輩の言葉には抵抗感を覚えたものです。

 

 覚えたにせよ、それは最初の出会いよりもいくらかの時間が経過した後のことだったでしょうから、私がその先輩の言葉に違和感、抵抗感を覚えたことがそのまま態度に出て、そして嫌われ無視された、ということではないのですね。

 

 

 

 私を誘ってくれたギターのバンマスも困ってしまったでしょう。

 

楽屋で私がその先輩に「おはようございます」と挨拶しても、まるで知らんぷり。

 

 私を見ようともせず、一言も言葉を発しないで、私以外の人とは普通に話をするのですから、バンマスに限らず他のメンバーもどうしていいのかわからずに、私とその先輩とを見ていたのだろうと思います。

 

 私もこのままではとても同じバンドのメンバーとしてやっていけないことは明らかになったので、次のバンドを探しましたし、当然バンマスもその先輩とは話をしていたことでしょうし、また私が遅かれ早かれ辞めることは目に見えてもいたでしょうが、どちらもすぐ次のバンド、次のピアノが見つからないまま、大体3か月くらいはそこにいたのだろうと思われるのです。

 

 

 

 何度でも言いますが、なぜ私がその先輩からあのような徹底した無視といういじめを受けねばならなかったのか、何度考えても納得いくような答は出てこないのです。

 

 

 

やはりこれは、過去世からの悪因縁が現在世で露呈したと考えるのが一番ふさわしいのではないのか、とそんなふうに思ってしまうのですね。